はじめに
山で飲む一杯は、
カロリーや水分を補給するためだけのものじゃない。
寒い稜線で、
ようやく風の弱い場所を見つけて腰を下ろしたとき。
朝露の流れるテントの中で、
シュラフにくるまりながら湯気を見つめているとき。
その一杯があるかないかで、
その日の記憶の「温度」が少し変わる。
どんなカップでも飲み物は飲めるけれど、
山での時間を支えてくれる器かどうかは、
意外とその後の選び方に響いてくる。
だから僕は、
マグカップを「ひとつあればいいもの」としてではなく
その日の山の設計に合わせて持ち替える道具として見ている。
この記事でわかること
この文章を読むとだいたい、こんなことがつかめるはず。
- 僕が
スノーピークのチタンマグ300、
エバニューのチタンデミタスカップ、
エバニューのチタンダブルウォールマグ300
の三つをどう使い分けているか - それぞれの
メリットとデメリット - どんな人には合いやすくて
どんな人にはあまり刺さらないか - 「マグは一個でいいのか問題」に対する
僕なりの答え
山道具のレビューというより
「自分の山の設計をどう組んでいるか」に近い話として読んでもらえたらうれしい。
山で飲む一杯は、“熱源”で性格が変わる
三月の山は、まだ冷たい。
風に当たる時間が少し長くなるだけで、
さっきまで熱かったはずの湯が、すぐ生ぬるくなる。
そんなときに支えてくれるのは、
スペック表よりも
その日どんな熱源を前提にしているかだと感じている。
- 火を持っていく日
- 火を持たない日
- 移動よりも滞在を楽しむ日
この三つが、僕の中のざっくりした軸になっていて、
そこにマグを当てはめていくと、自然に三種類に分かれていった。
火器を持っていく日 エバニュー チタンデミタスカップ
最初は「小さすぎないか」と思ったカップだった。
でも、バーナーとエバニューのチタンポット500を持っていく山行では
今はほとんど、このデミタスカップ一択になっている。
とくに、数日山にこもるような行程では、
ポットの中にカップまで収まっているだけで、
「これさえあれば大丈夫だ」という感覚がひとつ増える。

使い方とシチュエーション
- 火気類を持っていく山行
- コーヒーやスープを
サッと一杯だけ飲みたいとき - ポットにスタッキングして
パッキングを崩したくないとき
ポットの中にすべてが収まるので
ザックの中でバラけないし、
「どこいった」と探す時間も減る。
沸かす前提なら、
大きさは自由になる。
必要になったときだけ湯を沸かし、
必要な分だけカップに注ぐ。
この「小さな一杯」が、思った以上にちょうどいい。
メリット
- とにかく軽い
- ポットに完全スタッキングできる
- コーヒーやスープの「濃い一口」に向いている
- 山用ギアとしてのまとまりがいい
デメリット
- 量が少ないので
「たっぷり飲みたい」人には物足りない - 連続で飲みたいときは、何度かに分けて沸かす必要がある
- キャンプでの“くつろぎ用マグ”には向きにくい
こんな人には合う
- 荷物を削りたい
- 行動時間を優先しつつ
温かい一杯は確保したい - 「一口目のご褒美」が好きな人
こんな人にはあまり向かない
- マグはいつもなみなみ注ぎたい
- 一度沸かした湯で何杯も続けて飲みたい
- 山でもキャンプでも、一個を万能に使い回したい
──この道具が、誰かの静かな旅路に届けば。
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僕はさらに、
プリムスフェムトストーブに
エスビットの折り畳みのスク―をスタッキングしている。
火を持たない日 スノーピーク チタンシングルマグ 300
火を持たない日は、
熱を“運ぶ”日になる。
僕の場合、日帰り山行で
バーナーを置いていくときは
モンベルのアルパインサーモボトル0.5に熱湯を入れて、
そこにスノピのチタンマグ300をスタッキングして持っていく。
この組み合わせが、かなりしっくり来ている。

使い方とシチュエーション
- 日帰り登山で火気類を持たないとき
- 休憩のたびに湯を沸かすほどでもない山行
- 山でもキャンプでも、
「とりあえずこれがあれば何とかなる」一個が欲しいとき
モンベルの山ボトルとのシンデレラフィットのおかげで
パッキングもスッキリするし、
ザックから取り出したときの収まりもいい。
沸かさない日でも、
熱だけは持っていける。
その受け皿としての300ml。
使っているうちに
「とりあえずこいつを入れておくか」という存在になった。
メリット
- 軽い
- 直火にかけられるので
「やっぱり沸かしたい」となったときにも対応できる - 山ボトルとのスタッキングで携行性が高い
- 山でもキャンプでも出番が多い、汎用性の高さ
デメリット
- シングルウォールなので、保温力はほぼ期待できない
- 熱い飲み物を入れると、持ち手以外はかなり熱く感じることもある
- 無骨といえば無骨だが
「特別な所有感」を求める人には少し地味かもしれない
こんな人には合う
- 日帰り山行が多い
- 熱湯をボトルに入れて持ち歩くスタイルが好き
- 「迷ったらこれ」という一個が欲しい
こんな人にはあまり向かない
- とにかく保温を優先したい
- 冬キャンプで、ゆっくり長く飲みたい場面が多い
- 口当たりや飲み口の厚みなど、快適性を最優先したい
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滞在する日 エバニュー チタンダブルウォールマグ 300
このマグは、正直言うと
山よりもキャンプでの出番が多い。
僕の中では
「移動のギア」ではなく
滞在のギアという位置づけになっている。
使い方とシチュエーション
- 冬キャンプで、コーヒーをゆっくり飲む時間
- 氷を入れて、お酒を冷たいまま楽しみたい時間
- 焚き火のそばで、ただ座っていたい夜
ダブルウォールなので、
熱いものは冷めにくく、
冷たいものはぬるくなりにくい。
早さを求めない日には、
熱を守る壁があっていい。
「移動の途中」ではなく
「そこで過ごす時間」を価値に変えてくれる道具だと感じている。
メリット
- 保温性が高く、飲み物の温度が長持ちする
- 外側が熱くなりにくく、持ちやすい
- 氷を入れた酒にも、温かいコーヒーにも使いやすい
- 所有感がある
デメリット
- 直火にはかけられない
- シングルウォールに比べて重く、高価
- 山行で「軽さ」を突き詰めたい人には、優先度が下がる
こんな人には合う
- キャンプでの時間が好き
- コーヒーやお酒を“ゆっくり飲む”のが楽しみ
- 少し重くても、快適さや保温性を取りたい
こんな人にはあまり向かない
- とにかく装備を軽くしたい
- 山での使用がメインで、キャンプはほとんどしない
- 「お湯は沸かせればいい」くらいの温度感の人
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三つを持ち替えるということ
「マグなんて一個でいい」と思っていた時期もあった。
でも、
火を使うかどうか、
どれくらい滞在するのか、
どこまで荷物を削りたいのか。
その日その日で条件が変わる中で、
結局僕は、次のような並びに落ち着いた。
- 火を持つ日は エバニューデミタスカップ
- 火を持たず湯を運ぶ日は スノピ300
- 時間を楽しむキャンプの日は エバニューダブルウォール
どれも「最高の一本」ではなくて
それぞれが、その日の前提にフィットする一本。
効率だけを見れば、
一個にまとめるという選択もあると思う。
でも今のところ僕は
「その日用の一杯」を選ぶ時間も含めて
山やキャンプを楽しんでいるのだと思う。
結び 道具を選び、その日を選ぶ
この三つを使い分けてみて感じるのは
結局のところ
マグを選んでいるようでいて
自分がどんな一日を過ごしたいかを選んでいる
ということだ。
- 荷物を削って、さっと登ってさっと降りたいのか。
- 途中で小さなご褒美を挟みたいのか。
- 焚き火のそばで、ただ静かに座っていたいのか。
どれが正解とか、どれが偉いとかはない。
ただ、その日の構造に合った道具を一つ
そっとザックに入れていく。
それだけで、
山で飲む一杯は、少しだけ機嫌がよくなる



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