White Flame のミックスは、完全に鬼門だった
2曲目の「White Flame」。
曲そのものは、正直かなり早くできた。
クランチのリズムギター
16分寄りのカッティング
アルペジオと、奥で鳴る裏メロのギター
シンプルだけど、ちょっとだけレイドバックしたベース
ここまではスッと組み上がった。
「これはいいな」と自分でも素直に思えたし、仮ミックスの段階では文字通り無限にリピートしていた。
問題はそのあとだ。
ミックスとマスタリングに入った瞬間から、一気に沼になった。
▼この記事で書いている、最初の一曲「White Flame」です。
よければ、再生しながら読んでもらえたらうれしい。
仮ドラムと「16のノリ」に振り回される
最初のドラムは、ただのシンプルな8ビートだった。
キックとスネアをジャストに置いて、ハットは8分。
耳が慣れてしまうには十分な時間が経っていた。
そこに、DTMを教えてもらっている先輩からの一言が入る。
「ギターが16分で動いてるなら、ドラムも16のノリがあっていいんじゃないか」
頭では「それはそうだよな」と思う。
でも、実際に打ち込みで16分を足していくと、どうにも自分のイメージと噛み合わない。
ハットを細かく刻んでみる
ゴーストノートを増やしてみる
スネアを少し後ろにずらしてみる
やっていくうちに、どんどん分からなくなっていく。
「ドラムが上手い曲」には近づいているのかもしれないけれど、自分の中で鳴っていた White Flame とは少しずつ離れていく感覚があった。
最終的に戻ってきたのは、かなりシンプルな形だ。
- タイトな8ビート
- 裏に薄くクローズドハットのゴースト
- 2拍目と4拍目にしっかりアクセント
- ベースはほんの少しだけ後ろに置く
これだけで、曲が急に立ち上がった。
White Flame に必要だったのは「16分の情報量」ではなくて
冷えた世界の中でも、前に進むための、地面を踏むリズム
それだけだったんだと思う。
「完璧なテイク」と「燃えているテイク」
もうひとつ、大きな学びになったのがギターの録り直し問題。
仮で録ったテイクが、ものすごく良かった。
バッキングもアルペジオも、リードのモチーフも、多少のミストーンを含めて「これが今の自分だな」と思えるテイクだった。
でも、人間は欲が出る。
- ノイズを減らしたい
- ピッチをもう少し揃えたい
- もっときれいなフレーズで弾き直したい
そう思って、仮テイクを消してしまった。
丁寧に録り直したテイクは、確かに“完成度”は上がった。
音もきれいだし、リズムも揃っている。
でも、どうしても前のテイクより「温度」が低いように感じてしまう。
このとき、けっこう本気で落ち込んだ。
「ああ、芸術って本当に刹那なんだな」
一度消したテイクは、二度と戻ってこない。
同じフレーズを、同じように弾いても、指も心も微妙に違う。
録音して、自分の耳で何十回も聴いたあとだからこそ、その差が余計に分かってしまう。
それでも、どこかで折り合いをつけて
「今の自分が責任を持てるテイク」
として、録り直したバージョンを採用した。
嬉しさと悔しさが半々くらいの、なんとも言えない決断だったと思う。
この曲で学んだのは
- 完璧さと、火の強さは、必ずしも同じ方向にはいかない
- 録音は「上手くする作業」というより
「どこで決めて手を離すかを選ぶ作業」だということだった。
スマホ9割の世界で、どこまで詰めるか
ミックスでも散々迷った。
- ギターのハイが痛い
- ベースがモニターヘッドホンでは自然なのに、Boseのスピーカーだと打ち込み感がバレる
- コードのハイとリードのハイがぶつかる
- 削るとしょぼい、残すとうるさい
スマホ、PCモニター、モニターヘッドホン、スピーカー。
聴く環境を変えるたびに「正解」が少しずつズレて見える。
結局、割り切ったのはここだ。
- 9割はスマホで聴かれる
- 低音は「存在が分かればいい」くらいで良い
- リードは少しミッド寄りに寄せ、バッキングのハイはほんの少しだけ削る
- ベースは気持ち下げて、曲全体のグルーヴだけを支える役に徹してもらう
どの環境でも「破綻していない」こと。
そして、自分がちゃんと気持ちよく聴けること。
この2つを満たした時点で、「もうこれ以上はナンセンス」と判断して手を離した。
マスタリングは「諦める勇気」を決める工程だった
マスタリングというと
「音圧を上げる」「プロっぽく仕上げる」というイメージが強かったけれど、
White Flame に関しては
ここから先は欲張らない、と決める工程に近かった。
- リミッターで無理に押し込まない
- ダイナミクスを潰してまでラウドにしない
- スマホでもちゃんと鳴るラインを守りつつ、ギターの表情を残す
そう決めてからは、逆に作業が少し楽になった。
「もっとよく」を追い過ぎないことも、DTMでは大事なんだと思う。
それでも外に出すということ
最終的に White Flame は
- YouTube のロングとして公開
- ミョルニルのショートからの導線で、少しずつ再生される
- Bandcamp にも置いて、静かに灰色の棚に並んでいる
数字だけ見れば、まだ「小さい」側だと思う。
でも、ローカルでひとりで弾いていた頃とはまったく違う場所に、この曲は立っている。
何度も消して、何度も録り直して、
ドラムで迷って、ベースで悩んで、
それでも「今の自分の火」として外に出した。
White Flame は、僕の中にある小さな白い炎のひとつだ。
冷えた世界の中で、静かに燃え続けるための記録でもある。
同じようにミックスで沼っている人へ
もしこれを読んでいる人の中に
- 仮ミックスの方が良かった気がして消し飛びそうになっている
- ドラムとベースとギターのバランスが分からなくなっている
- 毎日同じ曲を何時間も聴いて、もう判断ができない
そんな人がいたら、White Flame の顛末は、少しだけ参考になるかもしれない。
- 仮テイクが良かったと気づけた時点で、耳はもう一段階育っている
- 完璧なテイクより、今の自分が責任を持てるテイクを選べばいい
- ミックスもマスターも、「どこで決めて手を離すか」を決める作業だ
僕もまだ、道半ばだ。
でも、この曲を通して少なくともひとつ分かったのは
音楽は、理論やツールだけではなく
「その瞬間の自分を、どこまで信じて残せるか」の勝負でもあるということだった。
White Flame は、そのひとつめの答えだと思っている。
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