DTM初心者ギタリストの奮闘記──CakewalkからReaperへ、最初の2曲ができるまで

エッセイ|コラム

インストール地獄から、「今の孤岳」を残すまで。

この文章で分かること

ギタリストがゼロからDTMを始めて、

  • どのDAWを選んだか(CakewalkからReaperに落ち着くまで)
  • 無料&最低限のプラグインでどう曲を組み立てていったか
  • ドラム打ち込みの沼と、仮ドラムに耳が慣れてしまう問題
  • 「完璧になってから出す」のをやめて、今の自分を残していく考え方

あたりを、わりと生々しく書いた記録です。

同じように「ギターは分かるけど、DTMは分からん」「環境しょぼいけど曲作りたい」って人の、
どこかの参考になればうれしい。

【1曲目】DTMを始めたばかりの頃、無料プラグインだけで仕上げた最初の曲です。
まだ少しラフで、整いきってはいないけれど、今の自分が出せた素直な音としてここに置いておきます。本文の「インストール地獄〜打ち込み初挑戦」の結果がこれ。

【2曲目】MODO Bassを導入して作った二曲目。
仮ドラム問題やドラムの揺れ方に悩みながら、今出せるベストを詰め込んだ曲です。


第1部 インストール地獄と、最初の火がつくまで

DTMの最初の敵は「作曲」じゃない

DTMを始める一歩目は、作曲でもミックスでもなかった。
まず最初の敵は、ソフトのインストールと設定だった。ここが本当にきつい。

CakewalkからReaperへ。長く付き合う一本を決める

最初に選んだのは、Cakewalkだった。
無料でフル機能という触れ込みで、とりあえずここからだろうと思った。

けれど、起動して数分で悟る。
UIが全く分からない。
何がどこにあるのか、どこを押せば音が録れるのか、何一つ体に入ってこない。

どうせなら、今後長く付き合える一本を決めたい。
いずれはきちんとお金を払ってもいいから、腰を据えて使えるやつがいい。
そう考えて、最終的にReaperへ移った。

職人気質で、余計な装飾がないシンプルさ。
その代わり、プラグインは自分でそろえないといけない。
そのストイックさが、性格的にしっくりきた。

無料プラグインとVST迷子

そこから、無料の音源をかき集める日々が始まる。
Ample Bass、AmpliTube、MT Power Drum Kit。
名前だけ聞けば「とりあえず最低限は揃ったかな」と思う。

だが、その前に立ちはだかったのが、VSTという謎の存在だった。

VSTって何だ。どこに入れればいい。
ダウンロードとインストールの違いはどこにある。
zipを解凍しただけで終わった気になっていると、DAW側には何も出てこない。

気づけば、各メーカーのサイトで会員登録をさせられている。
音を鳴らす前に、アカウントとパスワードだけが増えていく。

正直、DTMを始めること自体が、最初の大きなハードルだった。

英語UIとの格闘。ギターだけがかろうじて分かる

ReaperのUIは英語表記で、分からないボタンだらけ。
どこを押せばトラックが増えるのか、どこからエフェクトを挿すのか。
最初は全部、手探りだった。

あとで日本語パッチを入れて楽になるのだけれど、その頃はまだ知らない。

ギター録りだけは、昔ガレバンで遊んでいた記憶が少しだけ役に立った。
オーディオトラックを作って、インプットを選んで、録音ボタンを押す。
これならなんとかなる。

初めての打ち込み。「ピアノロールってどこ?」

問題は、その先だった。
ベースもドラムも、打ち込みは人生で初めてだった。

そもそもピアノロールの出し方が分からない。
やっと画面は出たのに、ノートを置いても音が出ない。
設定なのか、バグなのか、自分の操作ミスなのか。

「なんじゃこれ」と思いながら、何時間もPCにかじりついていた。

「ポコ」ノイズの正体を追いかけて

それでもなんとか、一曲の形になりかけてきた頃。
ミックスしていると、どこからか「ポコ」という小さい音が聞こえる。
微妙にグルーブがおかしい。
ベースなのか、ドラムなのか、よく分からない。

トラックを一つずつミュートにして、原因を探す。
表示を変えてみたり、ソロ再生したり、後ろで何か鳴っていないか確かめる。

最終的には、キックとベースのノートが、ほんの少しだけずれて重なっているだけだった。
寸分のズレが、あの違和感の正体だった。

手探りでも、一曲を最後まで走らせる

そうやって、一つひとつのトラブルをつぶしていくたびに、少しずつ景色が変わっていった。

「どこを触れば音が変わるのか」が、ようやく頭と指の中でつながり出す。
スタジオのアンプから鳴っていた音が、遠回りをしながらも、PCの中に帰ってきてくれる感覚があった。

基礎知識を完璧に覚えることより、まずは一曲を最後まで走らせること。
不完全でもいいから、手探りのまま前に進めること。

DTMの最初の一歩は、その覚悟を試されている時間だった気がする。


第2部 ギターとベースの地続き。ドラムは別世界。

ギターは「ホーム」。ベースはその延長線

ギターは分かる。ここはもうホームだ。
コードを押さえれば、だいたいどう鳴るかは身体が知っている。

ベースも、弦楽器の延長としてなんとなくイメージがつく。
まずはルートから追いかけていけばいい。
土台としてどこにいてほしいか、ギターの感覚から逆算できる。

だから、ベースの打ち込みはまだマシだった。
とりあえずルートを置いて、少しだけ前に出したり、後ろに引っ込めたり。
休符と裏でノリを作っていくと、
「ああ、グルーブってこうやって作るんだな」と少しずつ体で分かってきた。

ドラムは完全に未知の楽器だった

問題は、ドラムだ。
これは本当に未知の世界だった。

YouTubeを漁って「DTM ドラム 打ち込み」みたいな動画も見た。
でも、出てくるのはどこかで聴いたような、量産型のパターンばかり。
それっぽくはなるけれど、「やりたいことはこれじゃない」という感覚だけが強く残る。

じゃあ、どんなドラムが自分にとって「かっこいい」のか。
そこで頼ったのが、自分がずっと聴いてきた音楽だった。

参考にしたのは、量産型じゃないドラムたち

打ち込みで言えば、The xx、Beck、フルシアンテのソロ期。
生ドラムなら、チャド・スミス。

The xxの冷たいのに体温のあるドラム。
Beckの少しヨレているのに前に進むビート。
フルシアンテのソロ期にある、打ち込みなのに妙に人間くさいノリ。

そして何より、チャド・スミスのタイトでパワーのあるドラム。
シンプルで、手数も多くない。
それでも、曲全体をぐいっと前に押し出していく推進力がある。

YouTubeで、チャドがただ叩いているだけの動画を何本も見た。
難しいフィルではなく、ひたすらシンプルな8ビートを刻んでいる映像。
スティックの高さ、腕の振り幅、体の重心の乗せ方。
その「動き」を見ることで、ようやくビートの中身が少しずつ立体的になってきた。

無機質な打ち込みから、「歌うドラム」へ

最初は、いっそ無機質な打ち込みでもいいかなと思っていた。
カチカチのクリックみたいなビートで、ギターを上に乗せる。
それはそれで成立はする。

でも、どうしても自分の曲には馴染まなかった。
「違う。オレがやりたいのはこれじゃない」とすぐに分かった。

そこから、「チャド・スミスみたいなタイトでパワーのあるドラム」を目指す方向に振り切った。
難しいフィルは捨てる。手数も増やさない。
その代わり、一発一発をちゃんと「前に押す」音にする。
キックとスネアの位置、ハイハットの開け具合、ゴーストノートの入れ方。
すべてを「推進力があるかどうか」で選ぶようになった。

自分のやりたい拍子を、ひとつずつ確かめていく

ドラムに向き合う中で、一つ見えてきたのは、
「自分はどんな拍子で、どんな揺れ方をする音楽が好きなのか」ということだった。

4/4だけじゃない。
3連系の揺れ、6/8の揺れ、表と裏の感じ方。
自分のやりたい拍子が何なのか、ひとつひとつ精査しながら打ち込んでいく作業になった。

譜面の分数表記よりも先に、
「この曲はどんなリズムで呼吸したいのか」を、体で探していく。

そうやって作ったドラムは、打ち込みではあるけれど、少しずつ「歌いはじめた」。
ドラムがただのリズムパターンから、「曲の性格そのもの」を決める存在に変わっていくのを感じた。


第3部 DTMで、自分の音楽が還ってくる。

豪華じゃない環境だからこそ見えた輪郭

DTM環境としては、正直「豪華」とは言えない。
無料のプラグインがベースにあって、その上に少しだけ有料音源を足した状態だ。

アンプは、まだS-Gearを本格稼働させていない。
ギターは、これまでどおり無料アンプやAmpliTubeを使いながら作っている。
その代わり、二曲目からはMODO Bassを導入した。

リアルタイムで反応するベース音源を入れたことで、低音のノリがだいぶ変わった。
スライドや音の伸び方、止め方。
打ち込んだノートに対して、ちゃんと「ベースらしい動き」が返ってくる。
おかげで、ルート一発でも曲全体の推進力が出しやすくなった。

選択肢が少ないからこそ、一つひとつの音を意識的に選ぶ必要がある。
このコンプは本当に必要か。
この空間系は、曲を前に進めているのか、ただ「それっぽさ」を足しているだけなのか。

削って、また鳴らして、さらに削る。
その過程で、余計な装飾が落ちていき、残った音だけが自分の輪郭を浮かび上がらせてくれた。

初期は「ギター先行」。二曲目で見えた仮ドラムの罠

作り方としても、少しずつ変化があった。

最初の曲は、完全にギター先行だった。
ギターで世界観を作り、そのあとにベースを足して、最後にドラムを乗せる。
これはこれでよかった。
ギターの揺れ方を基準に、他のパートを合わせていけるからだ。

二曲目では、少し方法を変えてみた。
まず仮ドラムをざっくり組んでから、
その上にギター、次にベースという順番で積み上げていった。

出来としては、正直かなり良かった。
仮ドラムに引っ張られる形で、全体のまとまりも出た。

ただ一つ、大きな課題が見えた。
仮ドラムに耳が慣れてしまう問題だ。

最初に置いた仮ドラムを後から作り直そうとすると、
「最初のショボいドラムの方がしっくりくる気がしてしまう」という罠にハマる。
耳が最初のラフに慣れすぎてしまって、
クオリティ的には明らかに良くなっているはずなのに、違和感だけが残る。

この感覚は、二曲目を作って初めてはっきり分かった。
仮ドラムはあくまで「クリックをちょっと人間寄りにしたもの」であって、
完成形のイメージとくっつきすぎないように扱う必要がある。

「歌の代わりにギターが歌う」編成

曲の中心にいるのは、やっぱりギターだ。

ギターは三本。コード、リード、副旋律。

コードのギターが、土台として景色を作る。
リードのギターが「歌」を担当する。
歌詞はない。でも、その代わりにギターがメロディを歌う。
副旋律のギターが、ときどき横から感情を差し込んでくる。

そこに、MODO Bassが地面を引き、静かなドラムが呼吸を作る。
キックとベースが一定の推進力を保ち、
ハットやスネアはあえて少し人間くささを残す。

全部のパートから、打ち込み臭さを完全には消さない。
完璧なテンポから、ほんの少しだけはみ出した「人の揺れ」をあえて残しておく。
そうやって一曲を通して流してみたとき、
「ああ、これはもうBGMじゃなくて、自分の音楽だ」と思えた瞬間があった。

まだ途中のDTM。それでも「今」を残す

二曲目を聴き直したとき、自分でもはっきり分かる変化があった。
リズム隊の打ち込みの精度が上がっている。
音圧も、全体のまとまりも、前より確実に良くなっている。

それでも、まだ途中だ。
ギターのニュアンスも、フレーズの抑揚も、もっと良くできるのは分かっている。
S-Gearだって、これから本格的に導入していく段階だ。
環境も、技術も、まだ育ちきっていない。

それでも、今の段階で一曲として残していく。
「完璧になってから」ではなく、「今の自分がここまでやれた」という結果をちゃんと置いておく。

完璧じゃなくてもいい。
むしろ、完璧じゃない「今」を残しておくことにこそ価値がある。
あとから振り返ったときに、
あの時点の耳、あの時点の手つき、あの時点の迷いが、
ぜんぶ音として残っていることに意味がある。


おわりに

DTMを始めてみて分かったのは、
「いつか完璧になってから作品を出す」なんて日は、おそらく一生こないということだった。

環境も、耳も、技術も、これからまだ変わっていく。
二曲目ができた今だって、「ここはもっと良くできる」がいくらでも見つかる。
でも、その「まだ途中」の状態ごと、音として残していくことに意味がある。

うまくいったテイクも、少し荒いニュアンスも、
足りない機材でなんとかした工夫も、
全部まとめて「そのときの自分」だ。

完璧じゃなくていい。
大事なのは、今ここで得た結果をちゃんと外に出して、置いておくこと。
それが積み重なったときにしか見えない景色がある。

このDTM奮闘記も、その途中経過のひとつだ。
何年か経って振り返ったときに、
「ああ、この頃はこんな音で戦ってたな」と笑えるなら、それでいい。

今日もまた、PCを立ち上げて、Reaperを開いて、
まだ少し不格好な「今の孤岳」を一本、そっと置いていく。


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小さな感謝とともに、静かな旅をつづけています。──孤岳より

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