ブラックダイヤモンド Vision レビュー|奥穂高で実感した“何も起きない”安心

登山道具

はじめてヘルメットを必要とした山

「これから奥穂・前穂・剱岳みたいな“ヘルメット必須級”の山に行きたくて、軽くてかぶり心地のいいモデルを探している人向けに、Black Diamond Vision を実際の山行(奥穂高)で使った感触をまとめたレビューです。」

初めて、ヘルメットを必然とする山行に出た。
奥穂高。
滑落や落石のリスクが、ほんの可能性ではなく現実としてある場所。

山では登頂すること以上に、安全に下山することが最大の目的だ。
心配をかけたくない人がいるなら、なおさら。

だからこそ、ヘルメットは保険ではなく、必然として必要な装備になる。

選んだのは、ブラックダイヤモンドの Vision。
軽さが際立ち、シンプルに信頼できる一台だった。


行動中の体感

最初にかぶったとき、顎紐が少し喉に触れた。
だが稜線に立ち、岩を越え、風にさらされるうちに、その感覚はどこかへ消えていった。

岩に頭を近づけるような体勢になったときだけ、「あ、ちゃんとかぶっててよかったな」と一瞬だけ意識する──その程度だった。

軽さがそのまま安心へと変わる。
集中を削がない装着感。
ヘルメットを忘れたまま、ただ歩くことに向き合えた。

自分は帽子を下にかぶるため、ワンサイズ上を選んだ。
結果的にそれは正解だった。
Visionはアジャスターの調整幅が広く、素頭でも帽子ありでも安定してくれる。

※メーカーは「帽子をかぶる場合にサイズアップが必要」とはしていない。
これはあくまで個人の判断。
可能なら試着をおすすめしたい。


山に馴染むデザイン

選んだ色は、アースカラー。
灰がかったオリーブに、わずかに光を吸う質感。

夜明け前の冷たい空気に濡れ、岩の陰に置いても目立たない。
稜線で日が差しても、やわらかい輪郭のまま、景色に溶けていく。

主張しない道具。
けれど、そこにあることが自然に受け入れられる。

山は、派手さよりも静けさを好む。
Visionの佇まいは、その静けさとよく響き合っていた。

道具が風景に馴染む。
その一体感こそが、長く山を歩くうえで選び続ける理由になる。


スペックと小さな工夫

  • 重量:230g(M/Lサイズ)
  • 材質:EPPフォーム+EPS+ABSシェル
  • 機能:低背サスペンション/ヘッドランプクリップ/取り外しパッド
  • UIAA認証

扱いやすく、かぶっていることを忘れるほどの軽さ。

細部にも工夫がある。

  • 薄手のキャップやバフを下にかぶると快適性が上がる。
  • 顎紐は指一本が入る程度で調整すると喉の圧迫を避けられる。
  • 下山後は軽く水拭きしておくと、匂いや劣化を防げる。

小さな積み重ねが、一日の安心を支えてくれる。

あえて挙げる弱点

軽さと通気性を重視したヘルメットなので、

・フルハードシェルに比べると、心理的な「装甲感」はやや控えめ
・通気スリットが多いぶん、寒い季節や強風では冷えやすい
・価格は入門向けヘルメットより一段高め

といった面はある。

それでも、「日帰り〜小屋泊クラスのアルプス岩稜を、軽く・ストレスなく歩きたい」という前提なら、このバランスはかなりちょうどいいと感じている。


結び──何も起きなかったことが成果

奥穂では結局、一度も危ない場面はなかった。
だからこそ分かった。

ヘルメットは「何もなかった」と胸を張って言えるその一日のためにある。
山では登頂する以上に、安全に下山することが目的だから。
心配をかけたくない人がいるなら、なおさら。

Vision はその役割を静かに果たし、
ただ守ることで、何も起こさず一日を終わらせてくれた。


──この道具が、誰かの静かな旅路に届けば。
リンクだけ、そっと置いておく。

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