TS9は本当に“名機”なのか?──フロントでしか鳴らない音に、何を見るか【レビュー】

ギター機材

はじめに

BOSSでもなく、モダンTSでもなく。
あえて「TS9」を選ぶ人には、きっと理由があると思う。

  • スティーヴィー・レイ・ヴォーンやジョン・メイヤーの系譜が気になる
  • 1stリイシューのTS9って実際どうなのか知りたい
  • ストラト+Fender系アンプでの相性を知りたい

そんな人向けのレビューです。

結論から言うと、僕にとってTS9は

フロントPU+Fender系アンプ+ソロ/リード用ブースト

この「限定専用機」としては本当に秀逸だけど、
オールラウンダーとしてはかなり人を選ぶペダルでした。


名機と呼ばれるゆえを、体験したかった

スティーヴィー・レイ・ヴォーン、ジョン・メイヤー、トモ藤田──
世界中のプレイヤーが一度は通ったと言われるTS9。

回路がどうとか、チップがどうとか、その前に
「自分の耳」で確かめたかった。

そう思って、1stリイシューの個体を購入した。

  • Maxon製
  • 銀ラベル
  • CEマークなし

見た目も、手触りも、フットスイッチのザラっとした踏み心地も「それっぽい」。
だからこそ、「どこまで現場で使えるのか」をちゃんと試してみた。


最初の違和感:コードとリアPUが壊れる

期待して踏んだ初日、まずコードで違和感が出た。

  • 6弦コードを弾くと、和音の芯が潰れる
  • 低音を足すほど、輪郭がにごっていく
  • リアPUに切り替えると、音が細くなり過ぎて「鼻にかかったコンプレッション」の塊になる

ボリュームを絞ると痩せてしまい、反応も鈍くなる。
「踏んだ瞬間、自由度が狭くなる」感覚が強かった。


それでも、フロントPUだけは別格だった

ただし、ストラトのフロントPUだけは別世界だった。

  • フロントPU+ボリューム全開
  • Fender系アンプを軽くドライブさせるセッティング

この条件を揃えたときだけ、TS9は一気に本領を発揮した。

  • ギラつきと中域の押し出し
  • 指に追従してくるような粘り
  • 低音寄りの単音フレーズに宿るブルージーな説得力

まさに「レイボーンのあのラインを弾きたくなる」トーン。
音だけでなく、弾いているこちらのテンションまで引き上げてくれる感じがあった。


ハーフトーンとセンター:惜しいけど及ばない

フロント+センター(ハーフトーン)は、まだ許容範囲に入る。

  • 音が少し丸くなり、艶が足される
  • クリーン寄りのフレーズには悪くない質感

ただし、コードを弾くとやはり分離が厳しい。
センター単体も「使えなくはない」けれど、
フロントほどの粘りと張りは出てこない。

僕の耳では、完全に「まあまあ止まり」だった。


コードプレイでの限界

コードに関しては、はっきり限界が見えた。

  • 明確に使えるのは「5・4・3弦の3和音」あたりまで
  • 高音側まで広げると丸くなりすぎて歯切れが悪くなる
  • 低音まで足すと輪郭がぼやけ、和音としての芯が崩れる

パワーコードや、短いスリーコードのフレーズなら「それっぽい」感じは出る。
でも、フルコードでバッキングするとなると、他のペダルの方が明らかに扱いやすいと感じた。


ピッキング反応の乏しさと、その理由

個人的に一番しんどかったのは、ピッキングへの反応だった。

  • 軽く弾いても潰れてしまう
  • 強く弾いても、思ったほど粘らない

結果として、ダイナミクスがひとつのレンジに押し込められる感覚が強い。

これは「そういう設計」でもあると思う。
TS9は、そもそも

  • 中域をぐっと持ち上げ
  • コンプレッションをかけて
  • ギターをミックスの手前に押し出す

ためのペダル。
その“押し出しの強さ”が、僕の普段の「ニュアンス重視のプレイ」とは、あまり噛み合わなかったんだと思う。


それでも、所有感はあった

TS9を手にしたときの高揚感は、正直かなりあった。

  • 銀ラベル
  • 角ばった筐体
  • 年季の入ったノブの触り心地

机の上に置いているだけで、
**「伝説の一部を、少しだけ手元に置いている」**感じがする。

音としては限定的だったけれど、
物としての古さや、歴史の重み、アイコンとしての存在感は、確かに心をくすぐってくれた。


結論:TS9は“限定専用機”として生きる

ここまで使い倒してみて、僕の中で出た結論はシンプルだった。

TS9は万能じゃない。
けれど、

  • ストラトのフロントPU
  • Fender系アンプ
  • ソロ/リード用のブースト

この条件が揃ったとき、「これでしか出ない音」が確かにある。

  • 低音寄りの単音フレーズ
  • レイボーン的なブルースライン
  • ちょっと音量を上げて、前に一歩出るソロの瞬間

そういう「一点突破の場面」では、TS9は今も名機だと思う。

逆に、

  • コードの分離が欲しい人
  • ハーフトーンやセンターPUもフルに活かしたい人
  • 一台でクランチからバッキングまで幅広くこなしたい人

にとっては、他のTS系(例えばSeymour Duncan 805のようなモダンTS)の方が、ずっと幸せになれるはずだ。

TS9がハマる人

  • ストラトのフロントPU+Fender系アンプで弾いている
  • SRV やジョン・メイヤー的な、ローワー寄りブルースリードが好き
  • 「コードやカッティング用は別ペダル。これはフロント単音専用機でいい」と割り切れる
  • ソロのときだけ前に出す、ブースト的な使い方に魅力を感じる

TS9をメインには勧めにくい人

  • 1台でクランチ〜コードバッキングまで全部こなしたい
  • ハーフトーンやセンターPUも含めて、どのポジションでも“気持ちよく”鳴ってほしい
  • コードの分離感やダイナミクス(ピッキングの強弱反応)を重視している
  • 現代的な曲調で、分厚いコードワークやレンジ広めの歪みを多用する

もし、あの音がどうしても欲しいなら選ぶ価値はある。
でも、音の幅や自由を求めるプレイヤーには、違う選択肢の方が確実に合っている。

これが、1stリイシューのTS9を
全力で使い倒して出した、俺の結論。


──この道具が、誰かの静かな旅路に届けば。
リンクだけ、そっと置いておく。

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