📘 孤岳02|看護の道へ。“かっこいい”だけで飛び込んだ俺の話

エッセイ|コラム

探してたわけじゃないけど、流れでそうなった

20代前半は、いろんな仕事してた。

パチンコ屋、営業、配達。どれも長くは続かんかった。

でもそのときは、なんで続かんのかもわかってなかった。

ポンコツやったけど、自分がそうやって認識すらしてなかったと思う。

ただ、うまくいかんことが多かった。

世の中が「これからは手に職やで」みたいな空気やって、

なんとなくそれに乗った。

知人が「看護どう?」って言ってきて、

「まあ行ってみるか」って体験行った。

看護技術、見て思ったんよな

体験行ったときに、看護師が処置してるのを見て、

なんか、かっこええなって思った。

そこが入り口やった。

それだけやけど、それで十分やったんやと思う。

別に人を助けたいとか、立派な動機はなかった。

かっこええ、それだけ。

准看はわりとすっと行けた

最初に入ったのは、准看の学校やった。

正直、もっと苦戦するかと思ってたけど、

思ってたよりもスムーズにいけた。

とはいえ、実習はしんどかったし、

実技なんて、何回やっても手が震えた。

でもまあ、不器用なりに、なんとか卒業できた。

クラスの人間関係は、わりと荒れてた。

派閥とか、陰口とか、そういうのが飛び交ってて。

でも俺はというと、

“ちょっと変なやつ”扱いされてただけで、

誰かと揉めることも、嫌われることもなかった。

「空気読めないよね」ってのは、何回か言われたけど、

その空気とやらが、何を求めてるのかは、

よくわからんかった。

正看でボッコボコにされた

ほんまにきつかったのは正看のとき。

教師と全然合わんかった。

実技評価もボコボコ。

実習も途中で行けなくなって、

単位も取れんかった。

1年生のまま2年留年。

3回やった、1年生。

さすがにしんどかった。

校長とも面談したし、辞める話も出た。

でも、辞めんかった。

なんでかはようわからん。

「なりたい」って気持ちが、

たぶん、本音のとこにあったんやと思う。

自分では意識してなかったけど、

「ここで投げたら終わりや」って感覚だけはあった。

小さな火が、まだ残っていた

ある日、実習から帰って、

車の中でひとり、泣いたことがある。

なんでできへんのか、ほんまにわからんかった。

頑張っても、追いつかん。

たぶん、限界やったんやと思う

自分の力じゃ越えられん壁が、そこにあった。

悔しくて、情けなくて、

それでも、あきらめたくなかった

ほんの小さな火やけど、

それが消えんかった。

仲間ができた

この頃から、仲間とようつるむようになった。

一緒に勉強したり、実習終わりに飲みに行ったり、

しょうもない冗談で笑ったり。

ほんの少しずつ、

人とつながるのが楽になってきた。

彼女もできた。

誰かと一緒に過ごす時間に、あんなに自然に笑えるんやなって、

そのとき初めて知った気がする。

「特別」やなくて、「普通」が嬉しかった。

ただ、それだけで、ずいぶん救われた。

自分のことを好きでいてくれる人がいるっていうのは、

それまであんまりなかった感覚で。

ふと、気づけば周りに笑い合える仲間がいて、

心のどこかが、やわらかくほどけてた。

「ああ、俺はここにいてもええんやな」って、

そう思えたんや。

卒業式で泣いた

正看、なんとか卒業できたとき。

卒業式で、みんなの前で泣いた。

なんで泣いたかようわからんけど、

たぶん、溜まってたもんが出たんやと思う。

苦しかった。

でも、やった。

ただそれだけ。

自分でもちょっと驚いたけど、

その涙はほんまやった。

ここまで来たな、って初めて思えた

何かをちゃんと最後までやったのって、

人生で初めてやったかもしれん。

評価されたくてやったわけじゃないけど、

卒業証書もらったとき、

「俺、ここまで来たな」って思った。

社会に出る準備ができたとかじゃなくて、

**「やっと、自分でひとつ越えたな」**って感覚。

それが大事やった。

看護師になった俺が、今ここにいる

あのとき看護師になった俺が、

今ここにいる。

あの選択がなかったら、

この話も書いてへんかったやろな。

大きな覚悟があったわけでも、

立派な志があったわけでもない。

ただ、選んで、やっただけ。

でも、やった。

それがすべてやと思う。

◇ 次の記事:📘 孤岳03|仕事ができるようになって、見えてきた“社会の理不尽”

がむしゃらに走ってきた。
でも、“できるようになる”と、見えてくるものがあった。

ちゃんとやってるのに、なぜか報われない。
その奥にあるのは、見えにくい「理不尽」だった。

そして、仕事だけじゃなかった。
結婚、承認、孤独。
「このままでいいのか?」という問いが、じわじわと浮かび上がってくる。

俺の価値観が揺れはじめた、そんな章。

 前回の記事:📘孤岳01|社会に馴染もうとして生きてきた。でも、それは俺じゃなかった。

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